音読をアウトプットに生かす

音読を何十回も繰り返してると英文をほとんど覚えてしまいます。例えば Harry The Dirty dog(どろんこハリー)は460単語くらい、ゆっくり読んで4分程度かかる英文の長さなのですが、最後までほぼ暗唱できる子どもは何人もいます。小学生の初心者でも音読練習を繰り返すことで必ずできるようになります。

 

もちろん無理に覚えようとする必要はありません。音読の最初の目的は英語らしい発音とリズムの習得にあります。ですからゆっくりと丁寧に練習するのが基本です。けれども最終的には暗唱できるくらいにまで読み込むことが大切です。英語を実際に話すときには、例文暗唱や音読によって蓄積された「英語らしい発音でサッと口に出せる英文」こそが役に立つからです。

今回は音読を繰り返した英文を活用したトレーニングをご紹介します。言わば、音読練習をアウトプット、つまり英語を話すことに生かす練習です。

簡単に言えば、本を見ないでその英文を暗唱してもらうのですが、それが単に丸暗記した英文の自動再生になってしまわないように、私がわざと区切ったり、文法的な理解を確かめたりしながら進みます。同じ本を使っている子どもを集めて一緒にやることもあります。なかなか楽しい感じになります。

たとえば、以下はHarry The Dirty Dogの冒頭部分です。

Harry was / a white dog / with black spots / who liked everything, / except … / getting a bath. / So / one day / when / he heard / the water / running in the tub, / he took / the scrubbing brush … / and / burried it / in the backyard.

これを以下のような感じで暗唱というか、日本語に合わせて本文を再現してもらうのです。

私:「ハリーは〜だった」
生徒:”Harry was”
私:「ある一匹の白い犬」
生徒:”a white dog”
私:「〜のついた、だけは?」
生徒:”with”
私:「じゃあ、黒いブチのついた、は?」
生徒:”with black spots”
私:「さらに、何でも好きだった、って説明が続く部分は?」
生徒:”who liked everything”

音で記憶している英語を口が動くに任せて再現するのはそう難しくないのですが、途中で止めるとその続きを言うのがぐっと難しくなります。ピアノやギターでも途中から弾こうとすると「あれ?」となることがありますね。

その結果、言おうとすることに合わせてアウトプットするという、実際に英語を話すときに近い練習ができるのです。しかも子どもたちは「分かるはずだ!」と、前向きな気持ちで楽しく取り組むことができます。

基本的には主語・動詞・目的語・補語・修飾語といった文の要素で区切ることになります。また、初心者にとって語順が分かりにくい前置詞や接続詞などの部分はレベルに応じて丁寧に進みます。次の箇所は文の構造が分かりやすく小学生の初心者でも簡単に暗唱できます。簡単ですが、前置詞句を使うときの語順や(「~から」が”from ~”となること)、後置修飾(with black spotsをa white dogの後に置くこと)という英語の重要なルールを知ることができる英文です。

私:「実のところ」
生徒:”In fact,”
私:「彼は変わった」
生徒:”he changed”
私:「まず、〜から、だけ」
生徒:”from”
私:「黒いブチのついた白い犬」
生徒:”a white dog with black spots”
私:「じゃあ、黒いブチのついた白い犬から、は?」
生徒:”from a white dog with black spots”
私:「〜へ、だけ」
生徒:”to”
私:「白いブチのついた黒い犬」
生徒:”a black dog with white spots”
私:「白いブチのついた黒い犬へ、は?」
生徒:”to a black dog with white spots”

もう一つ例をあげましょう。この本のクライマックスの部分です。海外の名作絵本を音読練習に使う良さは、読んでいて楽しく、記憶に残りやすい点です。子どもたちも自然に感情を込めた読み方になるところは、やはり名作の持つ魅力のおかげだと思います。

私:「〜するとすぐに」
生徒:”as soon as”
私:「子どもたちが始めた」
生徒:”the children started”
私:「こすることを」
生徒:”to scrub”
私:「子どもたちがこすり始めるとすぐに」
生徒:”As soon as the children to scrub”
私:「彼らは始めた」
生徒:”they began”
私:「叫ぶことを」
生徒:”shouting,”
私:「お父さん!お母さん!」
生徒:”Mummy! Daddy!”
私:「見て、見て!」
生徒:”Look, look!”
私:「早く来て!」
生徒:”Come quick!”
私:「ハリーよ、ハリーよ、ハリーだわ!」
生徒:”It’s Harry! it’s Harry! it’s Harry!”
私:「彼らは叫んだ」
生徒:”they cried.”

私は以前に10年ほど学習塾で英語を教えていたのですが、このような指導は不可能でした。そもそもサッと言えるようになるまで音読を繰り返した英文を生徒は持っていなかったからです。

学校や塾では、日本語に訳せるとか、文法問題が解けるというレベル以上の英語学習は求められません。ペーパーテストで効率的に得点するという目的から言えば、当然の帰結だろうと思います。でも、それでは英語を話せるようにはなりません。話すことが目的であれば、例文暗唱や音読を通じて覚えた英語をそのまま使う形であったとしても、とにかく文字などを見ないで自分の口から英語を出すというアウトプット練習が必要です。ペーパーテストの勉強しかしていないのに、必要なときにいきなり話せるなんてことは起きないと思います。

以前に「意味が分かり、英語らしい発音で、暗唱できるくらいに何度も音読した英文は貴重な財産だ」と書いたことがあります。Harry The Dirty Dog はおよそ460単語。小学生の初心者でも音読練習を積み重ねれば、貴重な460単語の英文を手に入れることができます。一方でこのような英文を一度も手に入れることなく英語学習を終えてしまう人々もたくさんいます。

例文暗唱や音読を通じて、この貴重な英文を子どもたちが増やしていけるようにしっかりサポートしたいと考えています。