英会話サイモンズで音読練習に使っている本の一つに、My Father’s Dragonがあります。「エルマーのぼうけん」という邦題で日本でも小学校低学年くらいの子どもたちに人気がある本です。
My Father’s Dragon(エルマーのぼうけん)は全3巻シリーズの第1巻となっていて、第2巻のElmer and the Dragon(エルマーとりゅう)、第3巻のThe Dragons of Blueland(エルマーと16ぴきのりゅう)へと続いています。
実は第1巻のMy Father’s Dragonだけは著作権の更新がなされていないらしく、パブリックドメイン作品(著作権の消滅したものなど)を集めた以下のウェブサイトなどに全文と挿絵が公開されています。
- ペンシルバニア大学の A Celebration of Women Writers内のMy Father’s Dragon
- プロジェクト・グーテンベルグ内のMy Father’s Dragon
- パブリックドメイン作品の朗読データを集めたLibriVox内のMy Father’s Dragon
- その他YouTubeにもMy Father’s Dragonを朗読している人が何人かいます。
もちろん英語版にしても日本語版にしても、書籍として出版されているものには出版物としての著作権がありますから、その本のページをコピーしたり写真を撮ったりして無断使用することはできません。けれども、分かる範囲で調べたり、問い合わせもしたのですが、やはり本文と挿絵自体は自由に使用することが許されている状態のようです。
インターネット上には著作権が切れた英語の名作がたくさん公開されています。たとえば、 Alice’s Adventures in Wonderland(不思議の国のアリス)や、Anne of Green Gables(赤毛のアン)や、The Old Man and the Sea(老人と海)などがそうです。これらは誰でも無料で読むことができますし、教材用に編集することも自由です。けれども、やはり小学生や中学生はもちろん、英語が得意な高校生であっても簡単に読めるレベルではありません。また、日本語で実際に読んだことがある小中高生もそう多くはないでしょう。そのような本を子どもたちに英語で楽しく読ませることはなかなか難しいと思います。
ちなみに「○○○なら英語で読んだことがあります」という話を中高生やそのお母さまから聞いたことが何度かあるのですが、よく聞いてみるとそれらは学習者用に語彙レベルを制限してストーリーを簡略化したGraded Readersという種類の本のことでした。Graded Readersは洋書リーディングの選択肢としてよく挙げられるのですが、やはり原作を読んだという喜びは薄れるように思いますし、簡略化されたことで面白さが失われているものも多いように思います。
そんな中、My Father’s Dragonは、子どもたちが絵本の次のステップとして、原書での洋書リーディングに挑戦するのに最適な1冊です。文法的に理解しやすい平易な英語で書かれている点、中学レベルの英語に加えて仮定法や助動詞+完了形といった高校英語の重要項目も含まれている点、子どもたちがそのまま覚えてしまいそうな楽しいセリフが多い点など、英語教材としても非常に優れていると思います。
インターネット上でも、このMy Father’s Dragonを中3や高1くらいで読めば、とてもいい勉強になるという意見を目にしました。その通りだと思います。いっそのこと、文科省が英語教育改革をあれこれ議論したり、魅力のない教科書を意味なく改訂するのはやめて、「My Father’s Dragonをきちんと読めるようにする」ということだけを中学3年間の目標とし、全国の中学校の先生方に知恵を絞ってもらった方が、絶対に日本の英語教育は良くなると思います。残念ながら、そんなことにはならないでしょうが。
私たち英会話サイモンズでは、以下のような形で子どもたちに取り組んでもらっています。
- まず日本語版を先に読んでおく。
- 1章ずつ音読練習を進める。音源はThree Tales of My Father’s Dragon (CD)を推奨
- 1章のうち2~3段落分にアンダーラインを引き、この部分については日本語から英語を再現できるようにする。
- 一通り音読できるようになり、アンダーライン部について再現できるくらいになったら、次の章へ進む。
たとえば、Chapter 1でアンダーライン指定をした箇所の一つは以下の部分です。you might as well expectの部分が高校英語なのですが、この部分も含めて子どもたちは案外簡単に再現できるようです。
- My father and the cat became good friends
- 父さんとそのネコはいい友だちになった
- but my father’s mother was very upset about the cat.
- でも父さんの母親はそのネコのことでご機嫌ななめだった
- She hated cats, particularly ugly old alley cats.
- 彼女はネコが大嫌いだった、特にみにくい年をとった野良ネコは
- Elmer Elevator, she said to my father,
- 「エルマーエレベーター」、彼女は父さんに言った、
- “if you think
- 「もしお前が思ってるなら
- I’m going to give that cat a saucer of milk,
- わたしがあのネコにミルクの一皿をあげるつもりだと
- you’re very wrong.
- お前は大間違いしているよ。
- Once you start feeding stray alley cats
- いったんお前が野良ネコに食べ物をやり始めると
- you might as well expect / to feed every stray in town,
- お前は予想したほうがいいよ / 町中のあらゆる野良に食べ物をやることを
- and I am not going to do it!”
- で、わたしはそんなことをするつもりはないよ」と
レッスンでは日本人講師が日本語訳を言う形で、日本語から英語への再現練習を行っていますが、今回、家庭でも練習ができるようにQuizletに入れてみました。英語で再現しやすいようにスラッシュで区切ってありますし、日本語もわざと逐語訳的にしてあります。難しい箇所には解説もつけようと思っていますが、まずは10章までを一通り作ってからにしようと思っています。
この本を使って洋書リーディングに挑戦したいという子どもたちや、挑戦させたいというお父さまやお母さまは、ぜひ試してみてください。